自堕落日記

気ままに思ったことをつらつらと書く備忘録的なアレ

アムネジア

 お正月から読んでいて、ついさっき読了。ということで忘れないうちに感想文書いておこうと思います。

 

 これ知ったのは某アライさんのツイートで、serial experiments lainの名前を見て気になったのがきっかけ。いい機会だしってことで読んでみた。

 まず最初に思ったのは、これ相当好き嫌いわかれるだろうなーってとこだった。幻想小説であることとlainの名前出てる時点で癖のある本だってのは承知していたわけですが、それでもここまで何も分からないままだとは思わなかった。

 いくつかキーワードが出てきたり、事件が起きたりと何も無いっていうんじゃない。というより色々と事は起きてる。だけど何ひとつ分からないまま。当然何ひとつ解決していない。そこだけは徹底してて、物語の中で「ああ、そういうことだったんか」ってなる部分が何もないの。これ凄いと思う。

 好き嫌いわかれるっていうのはまさにここで、物語において謎が解けたりすべてが明るみになることを期待して読むと裏切られる。そもそもこの本って多分、“わからない”ことが主題になってると思うから、事件が解決しないっていうのは当然なんだろうけど。ミステリーとして見なければ、何を意図しているかある程度推測できればって感じじゃないのかな。

 この本は後半にいけばいくほど“わからない”が増えていく。最後は主人公の自我も曖昧。誰が狂っていて誰が正気なのかもわからない。何が現実で何が妄想で、実際に起きたことはどれなのかもわからない。そして、わからないまま終わる。好みわかれるとは言ったけど、私はこの本大好きな部類です。現実という足場が揺らいで、普通や正気という命綱が今にも千切れそうな感覚たまらん。

 

 人間は認識の生き物だけど、その認識の正しさというのは何が担保になっているんだろうね。認識も記憶も、不確かさでいえば相当なもので。すべて最後には忘れられていく、記憶とは砂浜に残された獣の足跡でしかない。あれ、lainにも似たような台詞あったね? 派手に狂ってるのも狂気のひとつだけど、こういう静かな狂気というのはある種の恐怖感を抱かせるなって。さっきまで楽しくお話していたのに、急に会話が噛み合わなくなって、そもそも何を言っているのかさえわからなくなって。でもその人は至って真面目で使ってる言葉も同じで……みたいな薄ら寒い恐怖。あれと似たような感じ。

 

 これは人に薦めるの勇気がいると思う。間違ってもミステリーとして紹介して薦めることがないように気をつけなければ。そんな感じの一冊でした。